歯ぎしり・くいしばり

(1)歯ぎしり、くいしばりに対する意識

当院での治療はまず最初に歯ぎしり、くいしばりに対する力のコントロールに重点を置いています。まずは、日常生活のあらゆる場面で、どのくらい無意識にご自身でくいしばっておられるかに気付いて頂くところから始まります。大抵の方は、「自分が無意識にくいしばっているなんて、考えたこともなかった。」とおっしゃいます。

現代社会は、あらゆるストレスに囲まれています。その環境に身を置いていると、知らず知らずのうちに、「急がないと遅れてしまう」、「人からおかしいと思われないかな」、「何だかイライラする」、「頑張らないと」など、独りでに頭の中で考えてしまい、いつの間にか肩や口元に力が入ってしまっている時があると思います。それが悪いわけではありませんが、そんな時は無意識にくいしばる要注意ポイントです。

なぜこれらの事に意識して頂くかというと、歯ぎしりや、くいしばりによる歯の破壊力は非常に強いのです。歯周病や虫歯でもないのに歯を抜かなければならない程、グラグラと動揺した歯をされている方が意外と多くいらっしゃいます。

その動揺の原因は、歯ぎしりやくいしばりです。アメリカの最新情報で、歯を失う原因は40%近くが歯ぎしり、くいしばりという結果が出ています。(虫歯22% 歯周病25% 外傷・事故8%)
無意識に噛み過ぎているのです。

(2)歯ぎしり、くいしばりによる弊害

歯ぎしり、くいしばりによる弊害 ①天然歯・被せ物などの歯が割れる、歯の詰め物が外れやすい
②虫歯でもないのに歯が痛い(まるで虫歯が進行したように痛む)
③歯周病でもないのに歯がグラグラする
④寝ている間に頬の内側を噛んでしまう
⑤顎関節症
⑥慢性の肩こり、片頭痛

(3)噛む力のコントロールが大切

無意識時の歯ぎしりやくいしばりは、一本の歯に対して、その人の体重の5~15倍の力がかかると言われています。 成人男性60kgの人なら、300~900kg、1t近くにもなるわけです。

これ程の力が毎日毎晩加われば、歯は壊れるのは当然です。 そしてその歯ぎしりやくいしばりによる力の影響は、歯だけではなく、顎、首、頭、肩の範囲の筋肉が過度に緊張することにより、片頭痛、肩こり、顎関節症、耳鳴りなどの症状を引き起こします。

(4)歯ぎしり、くいしばりから歯を守るために

①スプリント・マウスピースの使用 歯ぎしり、くいしばりから歯を守るために
当院では、様々なダメージから歯とお身体を守るために、就寝用スプリント・マウスピースの使用をお勧めしています。 アゴの筋肉の緊張を取った状態での噛みあわせを実現させ、患者様お一人おひとりに合ったスプリント・マウスピースを作っています。

スプリントを装着された患者様の反応は、
・噛む時の歯の痛みの軽減
・味覚が良くなった
・歯肉がピンク色になった
・頭痛の消失
・起床時の頭の軽さ
・肩こりの軽減、腰痛の軽減
・顔の筋肉の張りがゆるみ小顔になった
・眉間のシワが無くなった
・口の中が明るくなった
など様々な効果があったという感想をいただいています。

②力を抜く練習
日常生活の中で、患者様自身が「あ、今くいしばっている」という場面を発見して、その都度力を抜くように心がけ、習慣化していただくことが大切です。この事は、外見上は分かりませんし、私達医療者がお手伝いする事が出来ないからこそ、非常に重要なことです。

私が患者様によく申し上げることは
・上の歯と下の歯を常に離す。唇は閉じていても、歯は上下離れている状態。
・口や口周辺の力を抜いて、口を「ポカーン」と開ける (お風呂場など一人になれる場所で、数分で構いません)
という二点です。無理な力が入っていない状態を体験することができ、上手に力を抜くコツがつかめてきます。

③「味わって食べる」ということ歯ぎしり、くいしばりから歯を守るために
食べる時の噛む力のコントロールは、とても大切です。
小さい時に、よく噛んで食べるように誰かに言われた事はありませんか?「よく噛んで食べる」事が、いつの間にか「力いっぱい噛む」事になってしまっている人が多いと思います。 おかきやスルメ、エビのしっぽなど、硬い、もしくはよく噛まないと飲み込めない食べ物が好きな方は要注意です。

以上のような食べ物を好まれる方は、無意識に力いっぱい噛んで食べておられる傾向があります。
本来、よく噛む、とは美味しいお料理を味わいながら感動しながら食べることを意味しています。この噛み方が大脳辺縁系を使った本来の噛み方です。

(5)老化と歯ぎしり

歯ぎしりやくいしばりが原因で顎関節形態が変形し、耳の穴を圧迫変形させ、耳が聞こえにくくなります。 そして、歯が摩耗する事で鼻から顎の距離が短くなり、口元にしわがいきます。 耳が聞こえにくく、口元にしわが寄り、歯が喪失していて、えらが張る、顔中がカチカチの表情になる。こういう方たちはどんな人でしょうか?

そう、老人の方々です。 ご自身で老化させないよう、歯ぎしりやくいしばりをコントロールしてください。歯を磨く事をプラークコントロールと呼び、細菌類の減少を目的としています。 それと同様にコントロールしなければならないのが、噛む力です。上手に噛む力をコントロール出来れば、ご自身の歯を健康的に維持することが出来ます。